人はみんな、便をするし尿を出します。
これらの排泄行為は、人の大切な尊厳のひとつです。
年齢を重ねたり、がんなどの病気によって体力が衰えたり、排泄感覚が鈍ったりするとオムツをあてるなど考えがちです。
しかし医療、介護の世界でも排泄ケアは人間の尊厳を守るケアとされていて、なるべく自力で排泄行為をおこなえることを目指しています。
最近、ひとりの比較的若い女性のお看取りをしました。
約4年がんと闘病し、出来る治療はすべてやったとのことで在宅医療を希望されました。
訪問診療に入ったときは数ヶ月の命と言われていたようですが、半年以上にわたり毎週自宅に伺って診ていました。
自分のことは自分でやるといった性格で、同居している介護者の手はほとんど煩わせることはありませんでした。
体力的にも厳しい状態になってからも、いつも洋服に着替え起きていて、気丈に振る舞っていました。
そして本当に最後の局面で、状態がはっきりしないとのことで訪問看護師さんが呼ばれた時のことです。
かなり危ない状態でしたので、さすがにベッド上での排便を促したようですが、それでも頑として聞き入れず、トイレで自分で排泄行為を行ったそうです。
そして翌日、用意されていた介護ベッドに移ることなく、長年愛用してきた自分のベッドで旅立たれました。
この方の場合は特殊な例かもしれませんが、排泄が人の尊厳であることを改めて実感しました。
今後も、排泄を自立できるように支援できる在宅医療を目指していきたいと思います。